IT導入補助金はITツールの導入を促進させるための補助金
「IT導入補助金」は、
中小企業や小規模事業者にITツールの導入を促進させるための補助事業です。
実際に補助金を出すのは経済産業省ですが、
「サービスデザイン推進協議会」という民間団体が窓口となっています。
ただITツールの導入を促進させることが主な目的ではなくて、ITツールの導入で
・経営の効率化
・サービスの向上
・稼働率の向上
・営業利益の増加
などといったことを達成してもらうのがIT導入補助金の真の目的なんですね。
なので、単なるホームページ制作では補助金が貰える可能性は低く、ホームページを
作ることで経営の効率化やサービスの向上などに繋がらないといけないわけです。
IT導入補助金が使えるのは中小企業と小規模事業者
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者を対象とした補助事業なので、
どんな会社やお店でも利用できるわけじゃありません。
補助金の対象となる業種は
・飲食業
・宿泊業
・卸、小売業
・運輸業
・医療、介護、保育
・製造業
・建設業
・サービス業
・旅館業
などで、中小企業や小規模事業者であればほぼ全ての業種で使えるようになっているんですね。
ただしIT導入補助金で中小企業や小規模事業者と見なされるには、
設定されている条件をクリアしてないといけません。
例えば、飲食業であれば「資本金5000万円以下」「常勤の従業員数が100人以下」の
いずれかの条件を満たしていないとIT導入補助金の対象事業者にならないんです。
IT導入補助金の使い道となるITツール
IT導入補助金はホームページ制作に特化した補助事業ではなく、
ITツール全般の導入に対する補助事業となっています。
そのためホームページ以外にも
・予約管理システム
・会計、給与計算システム
・電子カルテ
・勤怠管理システム
・接客ロボット
・クラウド会計ツール
などの導入にもIT導入補助金が使われているんですね。
むしろ予約管理システムなどのツールの導入がメインであり、ホームページ制作の方が
IT導入補助金では例外的な扱いと言っても良いかもしれません。
また、2019年度までは一方的に情報を発信するだけのホームページもITツールと
見なされていましたが、2020年度からは双方向の情報発信機能がある
ホームページでないとIT導入補助金の対象にはならないんです。
なので、単に会社やお店の情報を掲載するだけのホームページではなく、
商品の購入やサービスの申し込みなどができるホームページが必要ですよ。
IT導入補助金の利用には指定事業者との相談が必要
国の補助事業を利用したことが無いと分からないんですが、
国の補助事業の中には特定の事業者と連携しないと申請できないものがあります。
IT導入補助金はまさにそれで、I
T導入補助金を申請するには補助事業の事務局によって
指定されている事業者と相談して導入するITツールを決めないといけません。
なので会社やお店のホームページ制作で、適当にホームページ制作会社を選んで
IT導入補助金に申請するといったことはできないんですね。
まずは指定を受けている事業者と相談して、会社やお店が抱える問題点を洗い出し、
それを解決するためのホームページ制作を進めていく必要があるわけです。
ちなみに、指定を受けている事業者は全国にあり、
IT導入補助金の公式サイトで確認することができますよ。
決められた課題を解決できるホームページでないとダメ
IT導入補助金では、あらかじめ課題が用意されており、
ITツールを導入することでその課題が解決できないといけないんです。
用意されている課題は「業務」「効率化」「汎用」という3つのパッケージに分かれていて、
それぞれ
・業務・・・顧客対応、販売支援
決済、債権債務、資金回収管理
調達、供給、在庫、物流
人材配置
業務固定プロセス(実行系)
業務固定プロセス(支援系)
会計、財務、資産、経営
総務、人事、給与、労務
・効率化・・・自動化、分析
・汎用・・・広い業務に適用できる
といったプロセスが設けられています。
IT導入補助金を申請する場合、業務パッケージから1つプロセス以上、
もしくは業務・効率化・汎用2つプロセスを選びます。
(業務1つだけでもOK、効率化と汎用は業務の1プロセスとセットでないとダメ)
例えば小売業だったら、商品の販売システムをホームページに導入することで、業務の
「顧客対応、販売支援」と効率化の「自動化、分析」の2つのプロセスが達成できますね。
指定事業者と相談する際に、
ホームページ制作によってどういった課題が解決できるかを決めることになります。
ITツール導入で生産性が向上しないとダメ
国の補助事業では必ずと言って良いほど成果目標が設定されており、
補助事業を利用したことで成果目標がどの程度達成できているかを
随時報告しなければいけません。
IT導入補助金の場合は労働生産性の向上に関する成果目標が設定されていて、
申請の際には成果目標を達成するための計画を策定する必要があります。
IT導入補助金で設定されている成果目標は、労働生産性が1年後に3%以上、
3年後に9%以上アップすることです。
ホームページ制作でIT導入補助金を利用する場合には、ホームページを作ることが
労働生産性向上にどのように繋がるのかを考えないといけないわけです。
しっかりとした計画でないと補助金は貰えませんし、貰えたとしても成果目標が
達成できていないと補助金の返還を求められる恐れもあります。
成果目標を達成できていないと必ず返還となるわけじゃありませんが、
ホームページ制作が労働生産性向上に全く繋がっていないと見なされると
返還を求められることもありますよ。
IT導入補助金の補助率
ホームページ制作でIT導入補助金が使えるのは良いとして、
いくらぐらいの補助金が貰えるのか気になりますよね。
IT導入補助金はA・B・C-1・C-2・Dの5類型に分かれており、
それぞれの補助金額と補助率は
・A類型・・・30万~150万円、1/2以内
・B類型・・・150万~450万円、1/2以内
・C-1類型・・・30万~300万円、2/3以内
・C-2類型・・・300万~450万円、2/3以内
・D類型・・・30万~150万円、2/3以内
となっています。
ついつい補助金額の大きいB類型や補助率の高いC・D類型に目が行きがちですが、
中小企業や小規模事業者はA類型を利用するのが一般的です。
大規模な会社やお店だとホームページ制作に1000万円ぐらいかかることもありますが、
中小企業や小規模事業者であれば100万円200万円でもかなりクオリティの高い
ホームページが作れます。
A類型の補助率は1/2以内で、ITツール導入にかかる費用が最大300万円までなら
利用できるので、中小企業や小規模事業者は金額的にA類型で十分なんですね。
補助金額や補助率が高いと条件が厳しくなる
それから補助金額の高いB類型や補助率の高いC・D類型は、
A類型に比べて申請するための条件が厳しくなっています。
例えばA類型の場合、ITツール導入で解決すべき課題は業務パッケージから
1プロセス選ぶだけでOKです。
ところが補助金額の高いB類型の場合は、
業務パッケージから4プロセス以上選ばないといけません。
さらにB類型では、
3年間の事業計画期間中に年平均で1.5%の給与支給総額を増加させ、
最低賃金を事業所がある地域の最低賃金+30円以上にする必要もあります。
C類型とD類型は2プロセス以上で、なおかつC類型は業務をオンライン対応に
するためのツール、D類型はテレワーク環境に対応するためのツールである必要が
あるんですね。
B類型はホームページ制作でも採択される可能性はあるけど申請条件が厳しい、
C・D類型は条件は厳しくないけどホームページ制作だと採択される可能性が低い。
なので中小企業や小規模事業者のホームページ制作には、
補助金額や補助率は低いけど条件も比較的緩いA類型が適しているというわけです。
IT導入補助金の申請にはgBizIDアカウントが必要
IT導入補助金の申請を行うには「gBizID」というサービスのアカウントが必要です。
gBizIDは経済産業省が行っているサービスで、経済産業省を始めとして
・厚生労働省
・農林水産省
・総務省
・中小企業庁
・資源エネルギー庁
・日本年金機構
といった公的機関の各種申請に使えます。
政府はあらゆる業務の電子化を進めていますから、今後は先に挙げた
公的機関以外の各種申請でもgBizIDアカウントが求められる可能性があります。
ただし2021年7月現在、gBizIDアカウントの取得に非常に時間がかかり、
早くても申請から発行まで3週間以上かかってしまいます。
IT導入補助金に限らず国の補助事業や募集期間が限られているので、
gBizIDアカウントの取得が遅れることでIT導入補助金に申請できないことも
考えられます。
ですからIT導入補助金の申請を考えている場合は、
とりあえずgBizIDアカウントの取得手続きを先に済ませておきましょう。
IT導入補助金に採択されるためのポイント
国の補助事業には全国からかなりの数の応募がありますから、
申請しても必ず採択されるとは限らないんですね。
ただIT導入補助金は2016年に始まっており、
2021年現在では採択されやすい事業者の傾向が見えてきています。
その1つが「テレワークへの取り組み」で、IT導入補助金の申請時点でテレワークや
リモートワークに積極的に取り組んでいると採択されやすくなります。
また、IT導入補助金で導入するITツールによってテレワークやリモートワークが
推進されるといったケースも採択されやすいです。
先端設備等導入計画による固定資産税の特例がある自治体は有利
会社やお店のある地域の自治体が、先端設備等導入計画による固定資産税の特例を
受けているとIT導入補助金の申請で有利になります。
しかも自社が先端設備等導入計画と無関係でも、自社のある自治体が固定資産税の
特例を受けてさえいればIT導入補助金の申請で有利になるんです。
自社のある地域の自治体が先端設備等導入計画の固定資産税の特例を
受けているかどうかは、中小企業庁の公式サイトで確認することができますよ。
ただ、先端設備等導入計画の認定を受けてから中小企業庁の公式サイトに
掲載されるまで、多少のタイムラグがあります。
自社がある地域の自治体が先端設備等導入計画の固定資産税の特例を
受けているにも関わらず、中小企業庁の公式サイトにまだ掲載されていないことも
十分に考えられます。
なので中小企業庁の公式サイトに自社がある地域の自治体が記載されていない場合も
諦めずに、直接自治体に問い合わせてみましょう。
指定事業者選びが重要
IT導入補助金の申請は、
あらかじめ指定されている事業者に相談して事業計画を作る必要があります。
ある意味IT導入補助金に採択されるかどうかは、
指定事業者選びにかかっていると言っても過言ではありません。
指定されたばかりの事業者よりも2016年の補助事業開始当初から
指定されている事業者の方が有利なのは間違いありません。
過去に採択された実績もあるでしょうし、どういうことすると有利で、
どういうことをすると不利かということをよく分かっています。
ただ初めて国の補助事業を利用する場合には、
どの指定事業者を選べば良いのか分からないですよね。
なので過去にIT導入補助金に採択された周辺の会社やお店に相談して、
指定事業者を勧めてもらうのも1つの方法です。
まとめ
IT導入補助金について、
申請の条件や採択されやすくなるポイントなどについて詳しく紹介しました。
これからホームページを導入しようと考えている会社やお店にとっては、
IT導入補助金はありがたい補助事業です。
ただ2018年から少しずつ制度が変わってきており、
事業開始当初よりも採択条件が厳しくなってきています。
IT導入補助金以外にも
・小規模事業者補助金
・ものづくり補助金
などホームページ制作で使える補助制度は国・自治体ともに行っています。
ですからIT導入補助金と並行して、他の補助制度の利用も検討してみてください。