「小規模事業者持続化補助金」を利用した企業ホームページの制作方法を紹介
インターネットでの検索がデフォルトとなった現代で、ホームページを所持していないというのは明らかに不利であり、同業他社へ仕事を譲っている状態を言っても過言ではありません。しかし、ホームページの作成には、ドメイン・テーマなど用意する物が多く、時間・費用共に切迫されてしまう場合がほとんどです。これらの理由からホームページの作成・リニューアルに踏み切れない企業が多くなっているのです。今回紹介するのは「小規模事業者持続化補助金」というものです。「小規模事業者持続化補助金」というのは主に中小企業や個人事業主などの小規模事業者のビジネスを支援することを目的に政府が設けている補助金制度です。ホームページ専用のものではありませんが、事業の促進という理由で申請を行うことができます。ここでは「小規模事業者持続化補助金」の内容・特徴や申請方法、ホームページ作成について紹介していきます。
①「小規模事業者持続化補助金」の概要
まずは「小規模事業者持続化補助金」の概要について紹介していきます。前述の通り、「小規模事業者持続化補助金」は“中小企業や個人事業主などの小規模事業者のビジネスを支援することを目的に政府が設けている補助金制度”です。事業拡大・支援を目的とした制度であり、新型コロナウイルスに対応したものである場合は追加で支援を受けることができます。
金額は購入金額の2/3(上限は50万円)となっており、新型コロナウイルス対応の購入であれば3/4(最大100万円)の支援を受けることができます。ホームページ作成には諸々の費用が必要になるので、それらの補助を受けることができるということです。エンジニアを雇ってホームページを作成する場合は別ですが、一般的なホームページであれば数万円~週十万円で作成することができます。もちろん、オプション費用などは作成代行業者によって異なりますが、「最初は50万円あれば十分」といっても過言ではありません。そのため、「小規模事業者持続化補助金」を利用すれば初期費用を抑えながら自社のホームページを作成・リニューアルすることができるのです。
②どのような事業者が「小規模事業者持続化補助金」を利用することができるのか
「小規模事業者持続化補助金」はその名の通り、利用できる企業に制限があります。まずは「従業員が5~20人以下である」ということです。いわゆる「中小企業」にあたるのがこの制限であり、具体的には「商業系・サービス系であれば5人以下、それ以外は20人以下」と人数制限が設けられています。しかし、常時働いている従業員が対象なので、アルバイトさんやパートさんの人数はカウントされません。また、個人事業主の場合には同居家族の人数はカウントされません。
③どのようにして「小規模事業者持続化補助金」の申請を行うのか
「小規模事業者持続化補助金」は地域の商工会議所を通して申請を行うことができます。市役所や県庁ではないので間違えないようにしましょう。「小規模事業者持続化補助金」の申請には商工会議所の助言を得ることが必須要件となっています。そのため、実際に足を運んで担当者の助言を得る必要があります。また、商工会議所の会員ではなくても申請自体は行うことができます。
地域の商工会議所が分からない場合には、「会社の所在地(市町村名など) 商工会議所」と検索することで簡単に確認を行うことができます。また、日本商工会議所の名簿から確認することも可能となっています。
④「小規模事業者持続化補助金」の利用には審査がある
「小規模事業者持続化補助金」はビジネスの支援が目的となっている政策ではありますが、支援を受けるためには審査があり、合格しないと利用することができません。適当な事業計画で支援を受けることはできないので、丁寧に計画書を作成するようにしましょう。
「小規模事業者持続化補助金」の規定では以下のような点が考慮されると明記されています。
・自社の経営状況分析の妥当性
皆さんが運営している会社・事業の経営状況を適切に分析できているのかが問われます。あまりにも大きな赤字が継続している会社が「新事業を始めるので支援してください!」と申請を行っても、合格できる可能性は低いということです。逆に、業績が安定していれば良いということでもありません。安定しており大きな黒字が続いていれば支援する必要性を問われます。これほどの2極端な会社・事業はあまり存在しませんが、状況を客観的に見極めて申請を行う必要があります。
・経営方針、目標と今後のプランの適切性
「小規模事業者持続化補助金」を利用し、どのような展望をたどるのかをしっかりと予測できているのかが問われます。例えば、コンサルタント業を行っていた会社がいきなり飲食業にシフトするのは現実的とは言えません。大企業であれば知名度という点で一定の評価がありますが、中小企業が事業内容を大転換させるのは「今後のプランや目標を適切に設定できていない」と判断されます。
「小規模事業者持続化補助金」で支援を受けたのちに、どのような展望があるのかを現実的な視点でアピールできるようにしておきましょう。
・補助事業計画の有効性
補助事業計画とは、「小規模事業者持続化補助金を利用してビジネスを行った際、周囲にはどのような影響が及ぶと想定できるのか」を示すものです。書類には、取引先の企業に与える影響や地域住民・環境に与える影響などを具体的に提示する必要があります。また、「小規模事業者持続化補助金」の申請においては「ITを有効に活用しているのか」という点も評価されます。今回の場合はホームページ作成ですが、販促や事業展開にどの程度IT技術を組み込んでいるのかという点も重要視されます。
・積算の透明、適切性
これは「小規模事業者持続化補助金」を利用して支援を受けた金額の使い道が透明化されているのかという事をアピールする書類です。「何に何円の費用がかかりいくらの支援を受ける」など、「小規模事業者持続化補助金」を利用する上での用途を明確にする必要があります。また、企業のビジネスに必要のない物は支援の対象外のため、個人的な費用は支援を依頼することができません。
⑤「小規模事業者持続化補助金」の申請に必要な物
「小規模事業者持続化補助金」の申請を行うには、いくつかの書類を用意する必要があります。電子申請だけでは足りない部分が多く、電子媒体(USBなど)や紙媒体での提出が必要なものもあるため、事前に確認しておきましょう。
・商工会議所に提出する書類
経営計画書、補助事業計画書
・商工会議所の補助金事務局に提出する書類など
小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(電子申請では不要)、これらのデータをすべて保存した電子媒体(USBメモリなど)
特に「電子媒体(USBメモリなど)」の用意ができていないことが多く、用意していないと支援を受けるまでに時間を要してしまいます。そこまで高額なものではなくても十分なので、あらかじめ用意していきましょう。
⑥新型コロナウイルスに関する政策加点について
2020年度からは、新型コロナウイルスに関する政策加点というものが適用されています。これは新型コロナウイルスの影響に屈することなく事業の展開を図る企業に対して審査基準を緩和する施策です。別途資料は必要になりますが、「小規模事業者持続化補助金」の審査で通過しやすくなるため、余裕がある場合には利用することをお勧めします。
なお、新型コロナウイルスに関する政策加点を利用するためにはいくつか要点があり、以下のうちどれかに該当する必要があります。
1、新型コロナウイルス感染症による経営上の影響(従業員等の罹患による直接的な影響、感染症に起因した売上減少による間接的な影響)を受けながらも販路開拓等に取り組む事業者
2、 賃上げの計画を有し、従業員に表明している事業者
3、 事業承継の円滑化に資する取組を重点支援する観点から、代表者が満 60 歳以上の事業者であって、かつ、後継者候補が中心となって補助事業を実施する事業者
4、 生産性の向上(経営力強化)の取組を行っている事業者
5、 地域未来牽引企業または、地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画の 承認を受けた事業者
6、 過疎地域という極めて厳しい経営環境の中で販路開拓に取り組む事業者
⑦「小規模事業者持続化補助金」の審査に合格した中小企業の割合
2019年度に中小企業庁が発表している採択率(審査に合格した割合)は、商工会議所区分で約86%となっています。かなりの高値であり、およそ1万5千件の応募のうち1万3千件が採択されています。
⑧審査で合格を受けるために必要な準備
採択率が高いとはいえ、十分な準備を行ってから申請を行う方が良いことは間違いありません。そこで、合格するために必要なポイントを紹介していきます。
まず、「企業の特徴を生かした事業であるか」という点です。たくさんの企業が行っている施策でも悪くはありませんが、その企業だからこそできる事業が好まれる傾向にあります。特に政策加点を利用している場合、「新型コロナウイルスの感染拡大が問題となる現代でも、自社でしか行えない新規事業を始めたい」という熱意をアピールする必要があります。
次に補助事業との兼ね合いを重要視する事です。自社が成長・発展することはもちろん大切であり、それを一番の目的としているのが「小規模事業者持続化補助金」ですが、周囲の企業や環境に対して良い影響を与える事業であるほうが審査で合格しやすくなります。自社だけではなく、「取引先の〇〇社にもこのような恩恵が生じる可能性が高い」など、周囲に与える影響も大きなポイントになります。
最後は、賃上げの計画を従業員に表明しているかです。こちらも補助事業にあたりますが、従業員の雇用確保・雇用促進のため、今後1年以内の賃上げを表明している企業の方が審査員にとって好印象となります。新規事業を行う前から表明するのは少々苦ではありますが、「それだけこの事業に力を注いでいきたい」という意思表明となり、十分なアピールができます。
⑨「小規模事業者持続化補助金」の対象となる項目など
「小規模事業者持続化補助金」の支援対象になるのは、以下の13項目となっています。これに該当する事業であれば支援を受けることができますが、該当しなければ審査に通らず支援を受けることはできません。
(1)機械装置等費、(2)広報費、(3)展示会等出展費、(4)旅費、(5)開発費、(6)資料購入費、(7)雑役務費、(8)借料、(9)専門家謝金、(10)専門家旅費、(11)設備処分費、(12)委託費、(13)外注費
上記の項目があれば事業にかかる費用のほぼすべては網羅されています。今回紹介する「ホームページ作成」は「(2)広報料」に該当するため、支援を受けることができます。また、ホームページのデザイン変更をエンジニアにお願いする場合でも「(9)専門家謝金・(13)外注費」が該当するので支援の対象となります。
注意が必要なのは、「販売手数料」などは対象とならないことです。自社以外のプラットフォームに商品を登録している場合(楽天市場〇〇店など)、購入に対して手数料が請求されます。この場合の手数料は「小規模事業者持続化補助金」の支援対象ではありません。「小規模事業者持続化補助金」を利用してビジネスを行った結果として発生したのが手数料なので、この場合は対象外です。また、「手数料を支援してもビジネスが活性化するとは言えない」という見方もあります。
加えて、ホームページ運営で重要となる「SEO対策」も「小規模事業者持続化補助金」の対象外となります。SEO対策が対象外である理由として、「直接的な広報を行っているわけではない」という点が挙げられます。また、「必ずSEO対策を行わなくてもホームページとしては十分に成立している」という部分も問題になります。SEO対策は各検索エンジンのアルゴリズムに沿ったコンテンツを作成するという施策のため、宣伝しているわけではありません。結果的に宣伝と近しい状況にはなりますが、直接的ではないことから「小規模事業者持続化補助金」の対象外となっています。
⑩実際に支援を受けられる状態が整ったら
無事、審査に合格しホームページ作成に取り掛かれるような状態が整ったら、まずはホームページの構成を考えましょう。初めて作成する際には、何から始めたら良いのか分からないかもしれませんが、一番良いのは「たくさんの企業のホームページを比較すること」です。たくさんの大企業が自社のホームページを公開していますが、それぞれ創意工夫を凝らした仕上がりとなっています。特に専属のエンジニアを雇っている場合、デザインやコンテンツにも注力しています。
同業他社のホームページを比較することで、自社のホームページに組み込むべき項目や案内事項などをピックアップすることができます。必ずメモを取りながら情報収集を行いましょう。
中には最初からエンジニアに依頼する企業もありますが、謝金が多くなってしまうことや、何もわからない状態ではエンジニア側も手探りの作業となってしまうため、効率が良くありません。結果的に「思っていたものとは少し違う」というホームページになってしまうこともあり、それでも作業をしたエンジニアには謝金が必要になります。せっかくの支援を無駄にしないためにも、まずは他社の研究から始めましょう。
⑪実際にエンジニアを募集し、ホームページ作成の発注をかける
大まかなサイトデザインやコンテンツが決まったら、インターネットを通してエンジニアの募集を行いましょう。クラウドソーシングサイトやエンジニア派遣など利用できるサービスはたくさんあります。複数のエンジニアを比較しながら、自分のイメージに一番近いホームページを作成してくれる人材を選びましょう。1サイトあたりの相場は30万円~50万円となります。凝ったアニメーションやデザインにする場合は100万円近くの費用が必要になることもあります。
エンジニアが決まったら、オンライン上やビデオ通話・対面などでホームページ作成の練り合わせを行います。ズレや相違が生じないよう、丁寧に説明するようにしましょう。また、いつでも連絡が取れるよう、連絡先の交換も忘れないようにしてください。
⑫完成したら謝金を支払い、サイトの運用を開始する
無事にホームページが完成したら、エンジニアに謝金を支払いましょう。今後もトラブル発生時に援助してもらえるよう、円満な関係を構築しておくことが大切です。
完成したホームページを運用していくには、記事投稿や情報発信などが必要になります。前述の通り、この部分に関しては「小規模事業者持続化補助金」の対象外なので自分で記事を投稿していくことになりますが、会社の概要だけではなく、専門知識の情報発信なども有効です。一般人が知りたいと思っている情報を常に提供できるようにしましょう。
また、お店であれば営業時間関係のお知らせもホームページを通して行うことができます。たくさんのユーザーが閲覧するようになれば、インターネットを通して集客ができるようになります。24時間、世界中の方に対して事業・店舗の営業を行うことができるため、広告費を支払うより安く済む場合もあります。
まとめ:「小規模事業者持続化補助金」を利用してホームページの作成・新調を!
今回は「小規模事業者持続化補助金」を利用したホームページの作成について紹介してきました。制度の概要や申請方法などを紹介しましたが、申請自体はそれほど煩雑なものではありません。会社・事業の状況を把握できていればそこまで問題なく申請ができますし、合格を受けることも難しくありません。
ホームページは現代では集客手段の一つに成長しました。紙媒体ではない分、維持費も安く済み、多数の見込み客に営業をかけることができます。広告よりも効果が出る場合もあり、ホームページを持たない理由がないといっても過言ではないほどです。また、「小規模事業者持続化補助金」は既存ホームページのリニューアルにも利用することができます。デザイン新調やレスポンシブ対応等、広報費として支援を受けられる面についてはしっかりと担当者と相談し、申請を行うようにしましょう。