大規模修繕1戸あたりの費用相場は?工事内容と費用を抑える方法を徹底解説
2024/05/17

築年数とともに訪れる、マンションの大規模修繕。
10年~15年ごとに実施されるこの工事は、数千万円から億を超える費用がかかるとも言われ、住まい手にとって大きな負担となります。
しかし、適切な知識を身につけることで、費用を抑え、賢く乗り越えることが可能です。
この記事では、大規模修繕1戸あたりの費用相場と、費用を抑えるための具体的な方法を徹底解説します。

大規模修繕1戸あたり費用の相場

大規模修繕にかかる1戸あたりの費用は、マンションの築年数や規模、修繕内容によって大きく異なります。
しかし、国土交通省や民間調査機関による調査結果から、ある程度の相場の把握が可能です。
国土交通省は、令和3年度に「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」を実施しました。
調査結果によると、大規模修繕1戸あたりの費用相場は以下の通りです。

  • 75万円~100万円:全体の24.7%

  • 100万円~125万円:全体の27%

  • 125万円~150万円:全体の17.4%

  • 150万円以上:全体の15.7%

このように、1戸あたりの費用は、100万円〜125万円の割合が最も高くなっています。
参考:国土交通省-令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査

築年数別の費用相場

大規模修繕の費用は、築年数が経過するにつれて増加する傾向があります。
これは、建物の劣化が進み、修繕が必要な箇所が増えるためです。
国土交通省が実施した、「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、築年数別の費用相場は以下のようになります。

築年数

費用相場

10年〜20年

約75万〜100万円/戸

20年〜30年

約100万円/戸

30年以上

約150万〜200万円/戸

ただし、これはあくまでも目安であり、実際の費用は、建物の規模や構造、修繕内容によって大きく異なります。
参考:国土交通省-令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査

築10年~20年の場合

築10年〜20年を迎えるマンションは、1回目の大規模修繕が行われる時期です。
築10年~20年のマンションにおける大規模修繕1戸あたりの費用相場は、約75万円~100万円です。
築10年~20年のマンションは、築30年を超えるマンションと比べて、まだ比較的劣化が進んではいません。
しかし、今後10年~15年で、外壁塗装や屋根防水工事などの主要な修繕時期を迎えます。
そのため、早めから修繕積立金をしっかりと積み立て、大規模修繕に備えることが重要です。
また、長期修繕計画を作成し、計画的に修繕を進めることで、費用を抑えられます。

築20年~30年の場合

築20年~30年を迎えるマンションは、2回目の大規模修繕が行われる時期です。
この時期になると、外壁や屋上などの劣化が進み、共用部分の設備更新も必要になってきます。
国土交通省の調査によると、築20年~30年マンションの大規模修繕1戸あたり費用相場は、約100万円です。
修繕時期が近づくにつれて、工事業者の選択肢が狭くなり、費用が高騰する可能性があります。
早めから修繕計画を立て、余裕資金を確保しておきましょう。

築30年以上の場合

築30年以上経過したマンションの場合、老朽化が進み、大規模修繕工事における費用も高額になる傾向があります。
一般的に、1戸あたり150~200万円程度が目安とされていますが、状況によっては300万円を超えるケースも少なくありません。
築30年超マンションの修繕費用が高くなる理由は、以下の通りです。

  • 老朽化による修繕範囲の拡大

  • 耐震補強工事の必要性

  • 高度な設備への更新

外壁や屋上、鉄筋コンクリートの劣化に加え、給排水管や電気配線などの設備も老朽化が進み、修繕が必要となる範囲が広がります。
近年の地震対策強化に伴い、耐震診断で問題が指摘された場合、耐震補強工事が追加で必要となります。
特に、1981年(昭和56年)以前の建物は、旧耐震基準であるため、早急な耐震補強が必要です。
また、家族構成の変化に伴い、バリアフリー設備や省エネ設備など、現代の生活水準に合わせた設備への更新も検討する必要があります。

工事内容別の費用相場

大規模修繕工事の費用は、工事内容別にみると、ある程度の目安の把握が可能です。
工事内容別の費用相場は、以下の通りです。

工事内容

費用相場

外壁塗装

約3,000〜7,000円/㎡

防水工事

約2,500〜8,000円/㎡

給排水管工事

約70万〜200万円/棟

電気設備工事

約500万〜1,000万円/戸

エレベーター改修工事

約1,000万〜2,000万円/基

上記以外にも、共用部分である廊下や階段の改修、防犯カメラの設置などがあります。

外壁塗装

外壁塗装は、大規模改修の中で最も費用の割合が大きい工事です。
外壁塗装の費用相場は、約3,000〜7,000円です。
大規模修繕工事における外壁塗装の費用は、使用する塗料の種類、建物の規模や状態、施工業者によって大きく異なります。
外壁塗装の費用は、塗料代、足場代、養生代、下地処理費用、塗装費用で構成されています。
外壁塗装で使用される塗料は、アクリル塗料、ウレタン塗料、シリコン塗料、フッ素樹脂塗料が一般的です。
大規模修繕における外壁塗装では、マンションに合った外壁塗装の費用を把握し、計画的に修繕を進めましょう。

防水工事

大規模修繕工事において、防水工事は最も重要な工事の1つであり、費用全体の大きな割合を占めます。
防水工事の費用相場は、約2,500〜8,000円です。
実際の費用は使用する材料や施工方法、業者の見積もりなどによって異なります。
防水工事の種類は、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水が一般的です。
防水工事は、専門的な知識と技術が必要となるため、必ず実績のある業者に依頼するようにしましょう。

給排水管工事

給排水管工事は建物の老朽化と住環境の快適性向上のために重要な役割を担っています。
給排水管工事の費用は、工事内容や建物の状況によって大きく異なり、数百万~数千万円かかる場合もあります。
工事の種類は、更生工事と更新工事の2種類です。
更生工事は、内側からライニング材を貼り付けて管を修復する工法で、更新工事は、古い管を撤去し、新しい管を取り付ける工法です。
更生工事の費用相場は、1戸あたり約10万円~、更新工事の費用相場は、1戸あたり約30万円~50万円が目安となります。
マンション全体では、約120万円~6,500万円と幅広くなり、建物の規模、構造、管路の種類、経路などによって変動します。

電気設備工事

大規模修繕工事における電気設備工事の費用は、建物の規模、老朽化状況、使用する機器、施工業者などによって大きく異なります。
電気設備工事の費用は、主に以下の項目で構成されています。

  • キュービクル交換:約1,000万円~2,000万円

  • 受電設備更新:約500万円~1,000万円

  • 幹線配線更新:約500万円~1,000万円

  • 分電盤更新:約300万円~500万円

  • 照明器具更新:約200万円~400万円

  • 漏電遮断機や火災報知設備の更新: 約500万円~1,000万円

キュービクル交換は、建物の電気系統を制御する重要な設備であり、老朽化により感電などの危険性が高まるため、電気設備工事の中でも最も高額な項目です。
受電設備更新は、高圧電力を低圧電流に変換する設備で、こちらも老朽化により、停電などのリスクが高まります。
幹線配線更新は、建物内を走る太い電線を交換する工事です。
幹線配線は、経年劣化により発火などの危険性が高まります。
分電盤更新は、各住戸やオフィスに電気を供給する設備で、ショートなどのリスクが高いため、定期的な更新が必要です。
照明器具更新は、省エネ効果やデザイン性向上などを目的に行われます。
その他には、漏電遮断器や火災報知設備などの更新費用も含まれます。

エレベーター改修工事

大規模修繕工事におけるエレベーター改修工事の費用は、種類、規模、グレード、業者によって大きく異なります。
エレベーター改修工事の種類は、主に制御リニューアル、準撤去リニューアル、全撤去リニューアルの3種類です。
制御リニューアルは、制御盤やモーターなどの部品を交換する工事です。
比較的費用が安く、短期間で施工できます。
準撤去リニューアルは、制御盤やモーターに加え、一部の機械設備も交換する工事です。
制御リニューアルよりも費用が高くなりますが、機能性や安全性向上に効果があります。
全撤去リニューアルは、エレベーター本体を丸ごと交換する工事です。
最も費用が高くなりますが、最新の機能やデザインを取り入れられます。

大規模修繕費用を抑える方法

大規模修繕工事は、マンションにとって大きな出費となります。
費用を抑えるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

修繕計画を早めに立てる

大規模修繕費用を抑えるためには、修繕計画を早めに立てることが重要です。
計画を立てることで、修繕内容を検討する時間が増え、複数の業者から見積もりを取り、比較検討ができるようになります。
また、長期的な資金計画を立て、修繕積立金を積み立てる時間を確保することも可能です。
さらに、補助金制度の活用も検討できます。

複数の業者から見積もりを取る

費用を抑えるためには、複数の業者から見積もりを取ることも重要です。
複数の業者から見積もりを取ることで、その工事の適正な価格を知ることができます。
また、価格だけでなく、技術力や対応力などを比較し、より良い業者を選択が可能です。
さらに、他社の見積もり金額よりも高かった場合は、値引き交渉の材料になります。

高耐久性・高機能な材料を使用する

高耐久性・高機能な材料を使用することは、大規模修繕費用を抑える有効な方法の1つです。
初期費用は高くなりますが、長期的にはランニングコストを削減できる可能性があります。
例えば、外壁塗装の場合は、最も耐久性に優れているフッ素樹脂系塗料を用いたり、汚れを分解して自然に洗浄する機能がある光触媒塗料などを用いることです。
また、照明設備を省エネ効果が高いLED照明に変えたり、太陽光発電の設置なども、その一例として挙げられます。
他にも高耐久性・高機能な材料が開発されています。
最適な材料を選ぶためには、建物の状態や修繕計画などを考慮して、専門業者に相談しましょう。

補助金を活用する

大規模修繕は、建物の寿命を延ばし、安全性を確保するために必要な工事ですが、多額の費用がかかるため、大きな負担となります。
そこで、費用を抑える方法として、補助金の活用が有効です。
補助金とは、国や地方自治体などが、特定の事業を促進するために支給する金銭です。
大規模修繕の場合も、各種補助金制度が設けられており、条件を満たせば、修繕費用のの一部を助成してもらえます。
補助金は、それぞれ助成対象となる工事の内容や条件、助成金額などが異なるため、詳細については、各制度の窓口に確認する必要があります。
補助金の申請には、時間がかかる場合があるので、早めに準備を始めることが大切です。
また、専門知識が必要となる場合もあるため、補助金制度に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

大規模修繕費用が足りない場合はどうする?

大規模修繕費用が足りないことは、多くのマンションで直面する課題です。
しかし、適切な対策を講じることで、乗り越えることができます。
ここでは、大規模修繕費用が足りない場合の対処法について解説します。

住民から一時金を徴収する

修繕積立金だけでは費用が足りない場合、住民から一時金を徴収することが検討される場合があります。
一時金とは、修繕積立金とは別に、住民から徴収する一時的な資金のことです。
大規模修繕工事以外にも、災害復旧や設備改修など、まとまった資金が必要となる場合に徴収されることがあります。
一時金を徴収するには、マンションの管理組合での合意が必要です。
合意には、議決権の過半数が必要となります。
また、臨時金の額や徴収方法、返済方法などについても、事前に合意しておくことが重要です。

リフォームローンで調達する

修繕積立金だけでは費用が足りない場合、リフォームローンを活用するという方法があります。
リフォームローンとは、住宅のリフォームや修繕などの費用を調達するために利用できる融資商品です。
銀行や信用金庫などの金融機関で取り扱っており、無担保または抵当担保のいずれかで借りられます。
無担保ローンは、担保となる財産がなくても借りられるローンですが、金利が高めに設定されることが多いです。
一方、抵当担保ローンは、自宅などの不動産を担保に借りるローンで、金利は比較的低くなりますが、返済が滞った場合、担保となる不動産が差し押さえられるリスクがあります。
リフォームローンを利用する場合は、無理のない返済計画を立てるために、借入額は必要最低限に抑えることが大切です。
また、複数の金融機関の金利を比較し、最も有利な条件のローンを選ぶようにしましょう。

工事の内容を見直す

修繕積立金や他の資金で費用が足りない場合は、工事の内容を見直すことで、費用を抑えることが可能です。
建物の状態や今後の計画などを踏まえ、本当に必要な工事だけを実施しましょう。
費用が高額な工事には、代替案がある場合があります。
例えば、外壁塗装の代わりに、部分的な補修を行うなど、費用を抑えられる方法を検討しましょう。
また、安全に関わる重要な工事から優先的に行い、その後、予算に合わせて必要な工事を追加していくのも有効な手段です。
大規模修繕は、建物の寿命を延ばすための投資です。
将来を見据えて、必要な工事を先延ばしにしないようにしましょう。

大規模修繕を延期する

修繕積立金だけでは費用が足りない場合、大規模修繕を延期せざるを得ない状況も考えられます。
しかし、大規模修繕を先延ばしにすると、建物や住まい手の安全を脅かす恐れがあります。
そのため、費用が足りない場合でも、 適切な対処法を講じて、計画的に修繕を進めていくことが重要です。
また、大規模修繕を延期する場合には、以下の点に注意する必要があります。

  • 建物の状態を定期的に確認する

  • 修繕積立金を計画的に増額する

  • 住民への説明を怠らない

大規模修繕費用が足りない場合や、修繕を延期するかどうか悩んでいる場合は、専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

ここまで、大規模修繕の1戸あたりの費用について解説してきました。
この記事の要点は、以下の通りです。

  • 1戸あたりの費用相場は、国土交通省が実施した、「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」に基づいたものです

  • 大規模修繕費用を抑える方法:修繕計画を早めに立てる。複数の業者から見積もりを取る、高耐久性・高機能な材料を使用する、補助金を活用する

  • 大規模修繕費用が足りない場合の対処法:住民から一時金を徴収する、リフォームローンで調達する、工事の内容を見直す、大規模修繕を延期する

  • 大規模修繕費用が足りない場合や、修繕を延期するかどうか悩んでいる場合は、専門家に相談する

大規模修繕は、建物の寿命を延ばし、安全性を確保するために必要な工事です。
費用を抑えるためには、計画的に修繕を進めていくことが重要です。
専門家のアドバイスを活用して、大規模修繕工事を成功させましょう。

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